White Wolf's Forest

ウルフマン 森の生活

とある小説家が山小屋で料理をしながらスローライフを目指す

五千坪の花見

毎週修理に工事、草木の手入れ。

業者は呼ばない。

自らの手で直し、整えていく。

やらないといけないことは絶えない。

 

水回りは痛むのが早いようで、ボイラーの故障、水漏れと次々に問題が見つかった。

先日その修理もようやく終わったが

まだトイレや風呂場はは壊滅的な被害が残っており宿泊はできない。

便器には大きなヒビ。漏れた水で床は腐って異臭がひどい。

壁や床を壊し取り除く。この作業をもう数週間やっている。

 

この際なのでトイレは無垢材で仕上げることにした。

先日、近所の製材所に足を運び近場で採れた無垢の杉板と檜板を見せてもらった。

 

そんなことをしている間に狼森に春がやってきていた。

 

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前のオーナーが植えていた大量の木々。

放置され、枝が折れ、多くの木々が虫や病気にやられていた。

冬の間にそれらをか剪定したことで春の風が木々の隙間を心地良く通り抜けている。

葉や花付きもよく、色香りも良い。

 

鳥も森に戻ってきた。

私が作業している上から物珍しそうに見てはピロピロと楽しそうに鳴いている。

 

この山には桜だけで何種類あるだろうか。

少し前は梅を楽しんだ。

梅もたくさんの種類が植っていたが、桜もまた様々な種類が終わっており、

開花時期も違ければ花色や花弁の枚数、香りも違う。

梅は『可愛らしい』、桜は『美しい』という表現がしっくりする。

 

川辺や公園に咲く一面の桜も見応えがあるが、殺風景な森の中に咲く桜もとても風情があり、これはこれでとても優美だ。

 

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私が作業をしていると隣山に住む隣人がいつも近くを軽トラックで走り去る。

ここを通るのは遠回りのはずだが、

必ずここを通りスピードを落としてじろじろと作業している私の姿を眺めていく。

完全移住になってから挨拶に参ろうと思い、

まだ挨拶へ伺っていないことを良く思っていないのかもしれない。

 

動物園の動物になったようであまり気分は良くないが、

これは田舎特有の新顔に対しての礼儀みたいなものだと思い

気にしないようにしている。

 

 

外での料理は案外楽しいものだ。

美味い空気と美しい花のお陰で簡素な料理もいつもよりも美味しく感じる。振る舞った人々にも喜んでもらえた。

大勢で食べる調理は賑やかで良い。

 

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前オーナーが置いていった調理器具。

掃除の最中にいくらかの食器と共に発掘。

使えるものは使う主義。きれいに洗って再利用。

即席の料理ならこれで十分だ。

 

剪定の際に薪がたくさん出たがまだ乾き切っておらず、

今回は薪での料理を断念したが、次はそういったこともできることを期待しよう。

 

やらねばならぬこと、考えねばならぬことは山積みだが、

この場所にたどり着けてよかったと心から思う春。