White Wolf's Forest

ウルフマン 森の生活

とある小説家が山小屋で料理をしながらスローライフを目指す

マーテルおばさんのアップルパイ

 

気がつくと私は古びた西洋風の大きな屋敷の廊下に立っていた。

目線は随分と低く、一階下からはカビの匂いと

不吉な冷たい風が階段を駆け上がってくる。

 

「何やってるの。いくわよ」

 

ゾロゾロと一つの部屋の扉から正装をした男女が出てきた。

 

違和感を感じるのはその服装と肌の色。

 

服は皆黒く、肌の色はとても血色が悪い。

まるで死体のような青白さ。

 

「あなたも人を驚かせに行って頂戴。今夜は忙しいのだから」

 

母親らしき人物は私にそう告げると

ふわりと浮いて半透明になった。

 

彼女は廊下に接する別の扉を念力で開けると

すぅっと吸い込まれるようにその扉へと

不吉な笑い声をあげて飛んでいった。

 

他の親族だと思われる大人たちも気がつけば皆幽霊のような姿に変わっており、

空中を忙しなく飛んでいる。

 

あちこちの扉が開いては閉じ、開いては閉じ、

その音が私の耳に響き渡った。

 

 

 

次の瞬間、気がつけば私は晴れた草原にいた。

どうやら裏にある家 ――外見は完全なる城なのだが

母親にお使いを頼まれたようだ。

 

ベルを鳴らすと、正門に置かれた上半身の女性の髑髏が

骨の擦れる音を立てて私の方を見た。

 

私は驚いて手に持ったバスケット持った手に力を込めた。

 

「マ、マーテルおばさんに会いたくて・・・・」

 

 

 

「まぁ、“おばさん”なんて失礼ね」

 

コツコツとヒールの音が響き渡る。

 

音の方向に目をやると

キセルを咥え黒い毛皮を羽織った妖艶な女性が

螺旋階段を降りてきた。

 

「失礼な坊やが何の御用かしら」

 

「ママがこれを・・・・」

 

マーテルがバスケットの中身を見ると

そこには華やかな色の焼き立てのアップルパイが入っていた。

 

「あらまぁ、これはどうも。お母様によろしく」

 

マーテルはそういうと毛皮をなびかせ

コツコツとヒールの音を響かせながら再び家の中へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

……という私の夢を見たわけだが。

 

マーテル“おばさん”と言いつつ

やたらと若々しく美しい容姿で

ミステリアスなその雰囲気に息を呑んだ。

もう少し彼女について少し知りたかったところだが、

夢はいつも面白くなりそうなところで終わるものだ。

 

 

 

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今日の料理:

カボチャ豆乳パスタ。

まろやかで濃厚な味わいだが後口は爽やか。

美味。